シンガポールでインターネット利用の価格破壊を主導している「MyRepublic(マイリパブリック)」が、同国に留まらず、東南アジア地域で頭角を現しはじめている。同社は、シンガポールで4社目のインターネットプロバイダ。特徴は、インターネットの通信速度に対する価格の安さ、つまりコストパフォーマンスだ。
シンガポールのストレーツタイムス紙によると、利用者は1Gbpsの通信サービスを月額49.99シンガポールドルから利用できる。これを換算すると、毎月1Mbpsあたりのコストは約5セント。同国のキャリア最大手である「Singtel(シングテル)」が13.9セントであることを踏まえれば、価格優位性は一目瞭然だ。
その他の競合他社も、2位の「StarHub(スターハブ)」が同様のサービスを月額395シンガポールドルで、3位のM1が399シンガポールドルで提供する。MyRepublicのライバルともいわれる「ViewQwest(ビュークエスト)」でさえ、月額149シンガポールドルで提供していることから、競合を軒並み大きく引き離していることが分かる。
平均通信速度で、アジアの上位3カ国(Akamai Technologies調べ)と毎月1Mbpsあたりのコストを比較すると、韓国が2.5セント、日本が3.0セント、香港が3.5セント。依然差はあるものの、MyRepublicがシンガポールの価格を他国の水準に近づけているといえるだろう。
TeleGeographyの報道によれば、すでにニュージーランドに海外展開を果たしているMyRepublicは先日、インドネシアに進出すると発表した。同国のバハサ、パレンバング、スラバヤなどを含む、国内9カ所でサービスの提供を開始する。
インドネシア版のウェブサイトでは通信プランを公開している。300mMbpsの通信サービスで、最安値の「ベーシックプラン」を月額約15USドルから、最上位「スーパーノバプラン」を月額約70USドルから提供する。
MyRepublicのCEOであるMalcom Rodriguez氏は、マレーシアへの進出を計画している。同国では100Mbpsの通信サービスを、月額16~19USドルで提供する予定。同国のキャリア最大手である「Telekom Malaysia(テレコムマレーシア)」は、1Mbpsの通信サービスを30USドルほどで提供している。進出先でも価格破壊を起こそうとしているようだ。
大胆な価格破壊と積極的な海外進出を推し進める背景には、豊富な資金がある。
MyRepublicは2014年に、インドネシアの財閥「Sinar Mas(シナルマス)」傘下のキャリア「Sunshine Network(サンシャインネットワーク)」、フランス系のキャリア「Free mobile」の創業者でフォーブスの億万長者ランキングで136位のXavier Niel氏から、あわせて3400万シンガポールドルを調達した。
その豊富な資金を使って、利用者獲得のためのキャンペーンを展開。たとえば、先着100人のサービス契約者に、通信サービスを1年間実質無料で利用できるようにした。ほかにも、優秀なスマートフォン向けアプリを決める表彰イベントを開催し、優勝者には上限2万5000シンガポールドル相当のマーケティングサポートを提供するなどして、知名度を高めてきた。
同社の攻勢は、日本のネット黎明期のソフトバンクの動きを彷彿とさせる。インドネシア、マレーシアの先も、東南アジアの周辺諸国に続々と進出していくことが予想される。成長著しい同地域のネット産業のキープレイヤーとして注目に値するだろう。
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