Visaディクソン日本代表「カードには固執していない」--デジタル戦略を聞く

 政府観光局によれば、2015年の訪日外国人旅行者数は前年比47%増1973万人、その経済効果は3.4兆円まで拡大している。これを受けて、政府は東京オリンピックが開催される2020年の訪日外国人の目標数を2000万人から3000万人へと引き上げた。さらなる経済効果を期待したいところだが、その足かせになりかねないのが、日本でのクレジットカード普及率の低さだ。

ビザ・ワールドワイド・ジャパン代表取締役のジェームス・ディクソン氏
ビザ・ワールドワイド・ジャパン代表取締役のジェームス・ディクソン氏

 他の先進国の個人消費支出におけるカード支払いの比率は、米国(41%)、中国(55%)、カナダ(68%)、韓国(73%)となっているが、日本はわずか17%にとどまる。これには海外諸国に比べて治安がよく、現金を持ち歩いていても安全であること。また、ATMが多いため、どこでも現金を引き出すことができ、自動振替や振り込みなどの仕組みも整っていることなど、さまざまな要因が考えられる。

 しかし、それにともないクレジットカード決済を導入する店舗が他国よりも少ないため、結果的に訪日外国人による消費機会を逃すことになってしまう。インバウンド消費に占めるカードの割合は、日本以外のG8の平均は59%だったが日本は38%。また、訪日外国人の37%が「カード払いができれば消費額は増える」と答えているという。

訪日外国人の37%が「カード払いができれば消費額は増える」と答えている(Visa資料)
訪日外国人の37%が「カード払いができれば消費額は増える」と答えている(Visa資料)

 訪日外国人による消費拡大に向けて、“現金社会”の日本をキャッシュレスな国へと変えようとしているのが、「Visaカード」などで知られるVisa(ビザ)だ。2015年9月にビザ・ワールドワイド・ジャパンの代表取締役に就任したジェームス・ディクソン氏に、同社のデジタル戦略や、クレジットカードに対する考えを聞いた。

 なお、ディクソン氏は1992年にVisaに入社し、日本とシンガポールに駐在経験を持つ。直近では、北東アジアのグループカントリーマネージャーとして、韓国、台湾、香港、マカオ、モンゴルにおけるビジネス戦略遂行を統括していた人物だ。

現金社会は「大きなチャンス」

--日本市場をどう見ていますか。国内におけるカードの利用状況も教えて下さい。

 日本は非常に経済が発展していますが、やはりコンシューマがキャッシュ(現金)ベースであることは否めません。ただし、これはVisaにとって大きなチャンスと言えます。我々が提供するさまざまなソリューションは、現金の代わりとなるからです。非常に利便性が高くセキュアな決済手段であることを、これまで以上に皆さまに伝えていきたいと思います。

 日本でのカード利用としては、やはりクレジットカードが主流です。ただし、この10年くらいで変化も起きていて、最近は少額決済ができるデビットカードが最も成長しています。また、比較的新しいプリペイドカードもこれからさらに成長していくでしょう。コンシューマは、クレジットやデビット、プリペイドなどを自由に選べる時代になったのです。

先進国のクレジットカード普及率(Visa資料)
先進国のクレジットカード普及率(Visa資料)

--訪日外国人向けの取り組みについて教えて下さい。日本では、クレジットカード決済に対応する店舗が他の先進国より少ないことが課題といえます。また、地方や小規模な店舗では、カード決済端末の導入が障壁になっていることもあります。「Square」などスマートデバイスを決済端末に変えるサービスとの連携についてはどう考えていますか。

 インバウンドに対する現状ついては、障害や課題とはみていません。やはり現金から電子マネーへと決済手段が変わるには時間がかかるので、(訪日外国人の増加は)非常に大きな機会だと思っています。これはコンシューマにとっても、加盟店にとってもそうでしょう。

 また施策としては、中国の旧正月のタイミングに「さっぽろ雪まつり」とキャンペーンを実施したり、京都市と「地方活性化包括連携協定」を結んだりするなど、訪日前後の取り組みも実施しています。実は最近発表したのですが、我々はSquareにはかなり早期から投資をしていまして、今後もそういったローコストで代替手段を提供できるパートナーは模索していきたいと思っています。

--Visaは「Apple Pay」や「Android Pay」など、スマホによる電子決済とも連携しています。今後は、デジタル化が進み、“カード”という存在自体がなくなる日もくるのでしょうか。

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