10代のスマホ依存症をどうする--専門家が指摘する脳への影響

Terry Collins (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2017年04月18日 07時30分

 ワシントン州コロンビアに住むAmy Fleetwoodさんは、娘たちとの衝突にほとほと疲れ切っていた。娘たちが四六時中、テキストメッセージをやり取りしたり動画を見たり、Snapchatで「スナップ」を送ったりしているからだ。

 スマートフォンの小さな画面からどんな影響を受けるのか、大きなスクリーンで見せようと、Fleetwoodさんは感謝祭の直前、13歳のMarthaさんと16歳のSaritaさんを上映会に連れて行った。スマートフォン中毒やインターネット中毒を描いた「Screenagers: Growing Up in the Digital Age」という68分のドキュメンタリーだ。

 制作者のDelaney Ruston博士はこの作品で、ティーンエイジャーのテクノロジ中毒をめぐって自身の家族が繰り広げた苦闘を描き、青年期の脳に対する影響を論じながら、保護者にできることを提案している。ただし、このドキュメンタリーを見るには、個人またはグループが指導付きのディスカッションもセットにした上映会を主催しなければならない。たとえばFleetwoodさんの場合、およそ100人の親子を対象にした上映会を手配した。

 「まずは大枠を見つける必要があった。どんなルールを決めればいいのか、いつも明確にわかっているわけではないからだ」(Fleetwoodさん)

デジタル機器に依存する10代
デジタル機器に依存する10代に対して、私たちにできることは何だろうか?
提供:James Martin/CNET

 考え過ぎなどではない。10代の若者は実際に、起きている時間の半分くらいはスマートフォンやタブレットに張り付いている。Common Sense Mediaによると、デジタルデバイスを見ている時間は1日あたり平均6.5時間、全メディアになると約9時間を費やしているという。しかも、学校や宿題で使う時間はこれに含まれない。

 「こうした統計から、今すぐには解決できそうにない問題であることがわかる」。10代の若者が抱えるうつ病、不安、薬物乱用といったメンタルヘルスの問題の治療に当たっているNewport Academyで臨床支援のナショナルディレクターを務めるKristin Wilson氏はこう述べている。同氏によると、Newportで治療を受ける10代の5人に1人がテクノロジ中毒に苦しんでいるという。

 スマートフォンやタブレットで、「OK, Google」と話しかけるだけで瞬時に情報を調べられるというのは、誰にとってもうれしいことだ。探しているものが手元の小さな画面に表れたときには、心地よい達成感が得られる。この感情が起こると、脳内でドーパミンが分泌される。「楽しかった」ことを脳に伝える化学物質だ。食欲や性欲、薬物を求める気持ちを引き起こすのがこのドーパミンで、依存症の原因になることもある。特に10代のうちは、新しいことを習得するたびに脳内でドーパミンが過剰に分泌されやすい。

 「これに関して、もっと良い親になろうとする上で大きなきっかけとなったことがある。新しい情報を手に入れたり画面を見たりしているとき、(脳の一部から)ドーパミンが分泌される機能は、子どものときや10代のときが最も活発であると知ったことだ」。Ruston博士は2016年、「PBS NewsHour」でこう語っている。

 つまり、これは心理学ではなく、生理学的な問題ということだ。

脳への影響

 Common Sense Media(PDF)は2015年、米国の8歳から18歳までの子ども2600人を対象に、オンラインでの習慣について調査した。明らかになったのは、10代のほとんどがデジタルメディアを延々と利用しながら日々を過ごしているという事実だ。InstagramやSnapchatに投稿し、動画を視聴する。ゲームアプリで遊び、音楽を聞く。たいていは、宿題など何か他のことをしながらだ。実際、調査対象の10代のうち半数がソーシャルメディアを使いながら、60%がテキストメッセージを送りながら、76%が音楽を聞きながら宿題をすると回答している。そして、ほぼ全員が宿題の邪魔になっていないと答えているのだ。

 だが、それは間違っている。

 複数のデジタルデバイスをあれやこれやと連続的に使っていると、集中力の持続、理解度、記憶、生産性に影響することは、長年にわたり実施されてきたいくつもの研究や調査で明らかになっている。

 「マルチタスクについての研究で判明した特筆すべき点は、何をやっていても、成果はどんどん悪くなっているのに、逆に良くなっていると感じてしまうことだ」。著名な社会学者であり、マサチューセッツ工科大学(MIT)の心理学教授を務めるSherry Turkle氏は、ドキュメンタリー映画「Screenagers: Growing Up in the Digital Age」でこう指摘している。

 画面を見続けることの影響を、医師としてもっと追究したい。Ruston博士はそう考え、映画のなかで10人以上の社会学者や研究者にインタビューを行った。Seattle Children's Hospitalの総合脳研究(Integrative Brain Research)センターのディレクター、Jan-Marino Ramirez氏もインタビューを受けた1人だ。

 デバイス間でのマルチタスクをシミュレーションするために、Ramirez氏の研究室では、若いネズミを高速で変化する音と光にさらす実験を行った。Ramirez氏はカメラに向かって次のように述べている。「若いネズミの新しいことを学習する能力が、著しく損なわれることが判明した。音と光を浴びなかったネズミに比べて、迷路から脱け出る方法の学習に要する時間が3倍か、それ以上になった」

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