山岳事故の減少へ--ケータイ圏外でも登山者の位置がわかる「TREK TRACK」

 博報堂アイ・スタジオは8月8日、LPWAネットワークを活用した山岳向けネットワークインフラ「TREK TRACK」を8月18日に開始すると発表した。LPWAを使用した一般ユーザー向けのサービスは、TREK TRACKが初としている。


「TREK TRACK」用の小型GPSデバイス(右)。ウェブから、登山者の現在位置をリアルタイム表示する

 TREK TRACKは、LPWA通信を用いたゲートウェイと小型GPS端末を組み合わせることで、山岳地帯における人の位置情報の可視化と集中管理を実現し、山岳事故の減少を目指すサービス。第一弾として、山梨県北杜市にある瑞牆山での導入を開始する。


位置情報取得システムの概要

 LPWA通信は、LoRa方式を採用し、数百bps〜数十kbpsと低速であるものの、圧倒的な低消費電力と数キロメートル四方のエリアをカバーする。携帯基地局の電波が届かないエリアでも、小型端末が受信した位置情報をゲートウェに向けて送信することで、登山者の行動を記録できるほか、家で待つ家族や山岳管理者がリアルタイムで登山者の位置情報を把握できる。

 端末は単4電池2本で動作し、約3〜4日ほど持つという。ゲートウェイは山小屋などに設置するが、電気が通ってない場所でも動作するようソーラーパネルによる発電で、電力をまかなうことができる。できるだけシンプルに扱えることを目指しており、初期設定なしで電源を入れた瞬間から電波を送信する。


「TREK TRACK」で使用するゲートウェイ

 端末にはヘルプボタンが搭載されており、24時間365日稼働のTREK TRACK運営事務局にヘルプコールを送信できる。HELP信号を確認した場合、事務局は1時間以内に登録された緊急連絡先に連絡。家族側 が有事と判断した場合は、位置情報をもとに救助に向かう。また、3メートルの積雪下でもデータを送信できるため、雪崩事故による遭難者救出にも役立てられるとしている。

 近年のアウトドアブームにより、山岳遭難が増加。警察庁が発表した「平成28年における山岳遭難の概況」によると、山岳遭難の発生件数、遭難者数は、過去2番めに高い数値になっているという。また、山小屋や登山者同士のコミュニケーションの希薄化、単独登山の増加により、捜索が難航するケースが増えている現状があるという。同社では、自治体や山岳関係者などと連携しながら、こうした課題を解決するために開発を進めてきた。


実証実験の結果

 レンタルでの貸出を想定しており、1日990円から利用できる。予約サイトからの申込みが完了次第、郵送でデバイスを送付する。2018年1月にはバックカントリーエリアでの導入を開始するほか、ガイドと登山者、スキー・スノーボーダーをつなげる機能など、テクノロジを使ってアウトドアの課題を解決する機能を提供していくとしている。

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