2019年は「仕込み」が花咲く年に--LINE出澤社長と舛田氏にインタビュー

 言わずと知れた国民的メッセンジャーサービスを展開するLINEだが、2018年は、キャッシュレス決済、銀行、投資、保険、トークンエコノミーなどFinTech領域の拡大を中心に、AIやECといった多角的な動きを見せた。そこで2018年を振り返りつつ、2019年の展望を同社代表取締役社長の出澤剛氏と同社取締役CSMOの舛田淳氏にうかがった。

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(左から)LINE代表取締役社長CEOの出澤剛氏、LINE取締役CSMOの舛田淳氏

2018年は「仕込みの年」

――まずは2018年を振り返ってみていかがでしたか。

舛田氏 2018年は、多くの準備を進めてきたFinTech事業が初めて花を咲かせた年です。11月には2018年11月には、FinTech領域における事業戦略発表会「LINE Fintech Conference」を開催して、われわれの考えを具体的にお伝えできました。キャッシュレスに対する社会的温度も高まり、他のプレーヤーも増加して一種の“お祭り”状態となり、社会が動きつつあります。2014年ごろから仕込んできたLINE Payとしても、日本のキャッシュレス化にくさびを打てたと思います。

 コンテンツ面も「LINE MUSIC」を中心にストリーミング回りを強化しました。諸外国と同じく音楽コンテンツの大半がサブスクリプションに進むのは不可避です。この先にあるのは"いかに深いエンターテイメント"へ成長させるかでしょう。そのため「LINEチケット」の展開や、2018年12月に発表した渋谷公会堂のネーミングライツ、普通の方々がスターを目指せる「LINE LIVE」など弊社プラットフォームでコンテンツとの接点が増え、サービスから生まれたコンテンツが他のサービスを育てる相乗的効果が生まれたのも2018年の出来事だと思います。

出澤氏 (伝えたいことは)まったく同じです(笑)。冗談はさておき、2018年はコア事業と戦略事業に分割し、前者で収益を上げつつ後者で大胆な取り組みを目指してきました。FinTechを含む戦略事業は、新たな成果も多数生まれた重要な1年になったと思います。

舛田氏 2018年を一言で申し上げると「仕込みの年」ですね。一定のフェーズまで成長した各継続事業を、次のステージに押し上げる準備を行いました。「LINE Clova」も次のステージに押し上げるためのR&Dを始めましたし、事業の中核となる広告事業も旧来のアドプラットフォームから、100%自社開発のプラットフォームに移行するためテストを開始しています。

PayPayの20%還元キャンペーンは「孫さんが投資してくれた」

――社会的温度の高まりと言えば、PayPayの「100億円上げちゃうキャンペーン」が話題となりましたが、この施策についてはどのように感じられましたか。また、LINE Payも「20%還元キャンペーン」を2018年末まで実施しています。

出澤氏 キャッシュレス自体は大きな盛り上がりを見せています。他社のキャンペーンでもLINE Payの決済高が伸びる傾向があり、年末は大きく加速しました。ただし、キャッシュレス市場自体は非常に小さく、競合他社よりも現金ユーザーに対する訴求が優先する市場の活性化が重要でしょう。政府の規制緩和や中国のキャッシュレス化などの認知度が高まり、営業でも店舗の反応がとても良くなり、話を聞いてくれるようになりました。さまざまな環境が整い、キャッシュレス化に火がつき始めた状況だと認識しています。

舛田氏 (PayPayの「100億円あげちゃう」キャンペーンは)日本のキャッシュレス化を目的に、孫さん(ソフトバンクグループ代表取締役会長兼社長の孫正義氏)が投資してくれたと思っています。キャッシュレスに注目が集まり、実際の動きにもつながりました。加盟店も、キャッシュレスは集客や購買にはつながらないと最初はおよび腰でしたが、決済事業社と一緒にプロモーション活動することで、実際に購買客が集まったのを認識したはずです。

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 サービス単体でキャンペーンを仕掛けても、うまくいきません。事実が積み上がり、社会的空気が重なって成功したと認識しています。PayPayは確かに競合ですが、その分我々も積極的になれますし、現金信仰を破壊することは1社単独では不可能でしょう。PayPayに限らず同じ方向を向いた多くのプレーヤーが挑戦することで、一歩でも二歩でも現金の壁が動くといいなと思っています。その意味では同士ですね。

――還元は消費者に分かりやすいのですが、キャッシュレスが普及し、社会に浸透するにはメリットを理解しなければなりません。それを推し進める鍵は何でしょうか。

舛田氏 2つあります。1つは会計で並んでいるときに前の方が(キャッシュレスサービスを)使っている体験が大きいでしょう。現在はイベントなどキャンペーンにとどまっていますが、キャッシュレスを体験する方が増えていくことで日常化します。たとえば白物家電は頻繁に購入しませんが、「毎日得をする」「少し便利になる」ことの積み重ねで変化するでしょう。そのため我々はコンビニエンスストアやドラッグストアを重視しています。

 もう1つも日常の範疇ですが、公共料金や税金をLINE Payで支払えることでしょうか。2018年段階で神奈川県や大阪府、福岡市など自治体との取り組みを活性化させています。日々使用する社会基盤の決済に弊社の金融系サービスを入れることで日常化できるでしょう。送金や現金出金、割り勘が可能なLINE Payは我々の武器です。クレジットカード未保有者や銀行口座を積極的に使っていない方に対して、LINE Payや「LINE ウォレット」をご自身のお財布として日常的に使っていただくことが我々の狙いでもあります。

5年前からあった「LINE Bank」構想

――2018年を振り返ると、みずほフィナンシャルグループと共同設立した「LINE Bank」など、複数のFinTechサービスを次々に展開してきました。なぜ短期間にそれを可能にしたのでしょうか。

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