「データは嘘をつかない」--ITの力で大変貌を遂げた伊勢の老舗食堂「ゑびや」の革命

2019年03月18日 15時00分

飯島範久

 2月19~20日に御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンターで開催された「CNET Japan Live 2019 新規事業の創り方--テクノロジが生み出すイノベーションの力」。ここでは20日に行われたセミナー「伊勢の老舗食堂が先端テクノロジ提供企業「EBILAB」変貌。~ドッグフード文化が生み出すユーザー企業発のイノベーション~」と題し、EBILABのエバンジェリストであり最高戦略責任者 最高技術責任者である常盤木龍治(ときわぎ・りゅうじ)氏が登壇。AIやビッグデータ、BIツールを駆使して売上4倍、利益率10倍を達成できた理由を披露した。

伊勢の老舗飲食店がITの力で180度転換


EBILAB最高戦略責任者 最高技術責任者の常盤木龍治氏

 日々進化を続けているITによってビジネスは大きく加速していったが、飲食、サービス業においては、大手を除きまったく進んでいないという現実がある。それどころか、ITを毛嫌いし、提案してもまったく受け付けないこともあるという。そのため、POSを除いてまったく進んでいないのが実態だ。

 そんな飲食業界にITで革命を起こしたのが、「ゑびや」の代表取締役社長である小田島春樹氏だ。ゑびやは三重県伊勢市の伊勢神宮内宮にほど近い場所で、お伊勢参りの観光客を相手に、100年以上商売をしてきた飲食店。2012年に27歳の際、奥様の実家である「ゑびや」に入社。当時はまだそろばんと手切りの食券で商売をしており、Excelすら使っていない状態で、食べログの評価は2.86と低かったという。

 このままではダメだと、2013年にまずExcelでデータベースを作成。料理を写真で撮影しPowerPointで作るなど改革を始め、2014年にPOSレジを導入。2015年にはExcelがマクロで肥大化してしまい、このままでは無理と判断。2016年に機械学習による来客予測に着手する。

 店舗も空間デザインから改修し、2017年には画像解析AIデータ収集とRPAを導入して、データに基づく商品開発を実施。さらに2018年にはAZUREやPowerBI、MLの利用を開始。三重県は現金主義で、クレジットカード決済の比率も11%程度と低いが、この場所で、PayPayまで導入している。

 積極的に最先端IT技術を活用してきたゑびやは、同様の悩みを抱える飲食・小売業を救うべく、2018年6月にゑびやのシステム部門を「EBILAB」として分社化。店舗向けBIツールの開発やサービス業向けIoTツールの開発販売、機械学習による来客予測の開発販売などを手がけている。

 実は伊勢市の人口は約12万人で、そこに毎年800万人の観光客が訪れる。このため、人材確保が難しいが、ゑびやが開発したツールや画像認識AIによる調査など、テクノロジの力でこの問題を解決している。

 スタッフは、常盤木氏を除き全員が基本的に、IT業界未経験者ばかり。そんな人たちでも最新技術やデータベースに臆せず積極的に勉強し、使いこなしている。常盤木氏は「自らやるということがとても重要。それまでのキャリアは重要ではない。プログラム自体がコモディティ化し、ブロックを組み合わせるようにAIもIoTもシステムを組めるようになってきている。そういったプログラムだけで作れることを認識してほしい」と語った。

 店は機械学習や天候などを踏まえた来客予測データに基づいて行動している。たとえば、朝出社したらその日のメニュー別の数量予測を確認。時間別に予測されるため、スタッフを効率よく配置して料理の準備もできる。来客予測的中率は平均91.3%。最近では96~97%的中しているという。商品ごとの販売数の予測から、コメの炊飯量がわかるため、残飯を減らすことを実現。メニューの提供時間がわかっていれば、最速化も可能となる。これにより、これまで注文から20~40分も待たせていたが、10分で提供可能になった。


実際のゑびやのデータ。EBILABで開発した「TOUCH POINT BI」で集計から分析まで自動で実現

 廃棄ロスは72.8%削減された。これにより通常はロス分を価格に見込んで食材を仕入れていたが、ゑびやではロス分を価格に見込まないので、食材の生産者の方からより良いものを適正価格で仕入れられる。すると「ゑびやはいつも言い値で買ってくれる」となり、いい食材がどんどん集まってくる。さらに、美味しい料理を提供できることで、顧客からの評価も上がる。現在のランチ食べログ評価は3.50まで復活した。今まで低評価だった店が、ランキング5位にまで上がった。

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