インドネシアの配車アプリ事情(1)--混乱が続くタクシー業界VS配車サービス

 日本では京丹後市で現金決済も可能な配車を開始した「Uber」。クレジットカードが普及していない東南アジアでは、2016年から現金決済が可能となっている。

 東南アジアでは、シンガポール発「Grab」と、東南アジア最大の市場インドネシアでは「Go-Jek」も加わり、3社が熾烈な競争を繰り広げている。タクシー業界も黙っておらず、ジャカルタでは2016年、タクシー運転らによる大規模なデモが行われ大混乱が起きた。さらに2017年に入り、バリでもタクシー運転手によるデモが起こる中、バイクタクシー配車が中心のGo-Jekが業界最大手のタクシー会社と提携し、タクシーの配車も開始した。

 まずは、インドネシアでの現状を、現地でのUber利用体験から紹介したい。


ぼったくりタクシーよりはいいのだが……

シンガポール発のサービス「Grab」
シンガポール発のサービス「Grab」

 12月から1月、1カ月かけてインドネシアを横断する間に各地でUberを利用した。タクシーに乗ると、まずはぼったくられるからだ。GPSで追いながら「遠回りしてるよね?!」と詰め寄っても変わらず、「メーターが壊れていて使えない」詐欺もある。

 ジャカルタでは空港でUberを呼んだところ、Uber車はタクシーが並ぶ場所には入れないため、一般客が利用する駐車場で待つように言われた。1台にキャンセルされた後、リクエスト時には6分で着くと表示されていたが、その後、到着時間は10分、12分と伸びていった。

 Uber車は空港のすぐ外にいるようなのだが、渋滞で駐車場になかなか入れず、結局、30分待つこととなった。それがわかっていたらタクシーに乗っていただろう。

東南アジア最大の市場インドネシアでは「Go-Jek」も
東南アジア最大の市場インドネシアでは「Go-Jek」も

 その後、バンドンでも何度か利用したが、なぜか1台目にはほぼ必ずキャンセルされ、駅など公共の場では車種とナンバープレートを頼りに迎えの車を見つけるのに10~15分くらいかかる場合が多々あった。

 また、タクシーに比べたときのUberのメリットとされる「運転手が英語を話す」「GPSを使っているので目的地に問題なく行ける」というのは、インドネシアではそうとは限らない。行先はわかっているはずなのに「行先はどこ?」と聞く運転手に何人出会ったか。

 「クレジットカード払いでラク」というのもウリのはずだが、「クレジットカードだとUberから送金されるのに時間がかかるから、現金払いにして」という運転手もいた。

 マランでは、やはり1台にキャンセルされた後、アプリの地図上でリクエストした車が一向に出発地を動かない。「こちらに向かってる?」とインドネシア語(相手は英語不可)でメッセージを送ると、「もうすぐ用意できるから」と言いながら結局20分経っても動く気配がなく、こちらからキャンセルすると「キャンセルしやがって!」というメッセージが届いた。

タクシー運転手による脅し

タクシーに比べたときのUberのメリットとされる点も、インドネシアではそうとは限らない
タクシーに比べたときのUberのメリットとされる点も、インドネシアではそうとは限らない

 最悪だったのはバリ島だ。バスターミナルでUber車を待っているとUber運転手から「そこには入れないので外に出てきてくれないか」というメッセージ。そこで大通りに出ると周りのタクシーの運転手が数人ついてきた。

 やっとのことでUber車を見つけ、私は中に乗り込んだのだが、「配車アプリは違法なんだよ」と周りをタクシーの運転手に囲まれた。Uberの運転手が「こいつらとトラブルを起こしたくないので降りてくれ」と言うので渋々降りたのだが、タクシーの運転手に暴力をふるわれるUber運転手もいる。

 私は目的地までの相場はわかっていたので固定料金を交渉したのだが、タクシーの運転手らは鼻で笑い、「メーターを使うよ」と言う。「でも、遠回りするよね」と言うと、親分らしき人物が「GPSを持っているなら、それで遠回りするかどうかわかるだろう」というので渋々乗ったところ、案の定3回ほど遠回りされ、グーグルマップを見せながら「遠回りするな!」と何度言ってもどこ吹く風だ。結果として正規料金以上、払わなかったが、降車時には「警察でも何でも呼んでくれ」と言われた。

 その後、バリ島の観光地のタクシー乗場では「Uber/Grab/Go-Jek立ち入り禁止」の看板をよく見かけた。場所によってはホテルにUberを呼ぶと、ホテルの従業員が乗客がUber車に乗り込む写真を撮ってFacebookに投稿するらしい。

信じられない低料金が表示されるも、要求された「キャンセル」

 後日、バリ島で1時間半かかる目的地に移動するのにUberでは信じられない低料金が表示された。そのリクエストを受けておきながら、運転手は「こんな料金では行けないからキャンセルして」と言い出す始末である。というのも、自分たちからキャンセルするとUberにキャンセル料金を取られるからだ。客に「キャンセルしてくれ」という運転手に何人出会ったことか。

 他に車がすぐに見つからないので、Uberではなくその運転手と固定料金を交渉して合意した。

 その車をホテルで待っていると突如、バリ島でよくあるヒンズー教儀式が始まり、前の道路が渋滞で動かなくなった。スマホ片手に車を探しに行って見つけたのだが、後で運転手に「スマホを掲げながら車を探すなんて危険極まりない!Uberだとわかると僕は酷い目にあう」と説教された。タクシー会社は各町村に寄付のようなものをしているらしく、町村の人たちもタクシー会社を応援しているということだった。

 空港などはタクシーが多く危険なので、彼は前もって予約した客しか受け付けず、当日は待ち合わせ場所を細かく指定し、彼が客を見つけるようにしているそうだ。なお、2016年12月にバリ空港は配車アプリの禁止を公に表明し、違反者の通報を促している。

有元美津世(ありもと みつよ)
大学卒業後、日米企業勤務を経て渡米。MBA取得後、独立。16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。現在は投資家。在米30年の後、東南アジアを中心にノマド生活。
著書に、ロングセラーの『英文履歴書の書き方』『面接の英語』(ジャパンタイムズ)の他、『ロジカルイングリッシュ』(ダイヤモンド)、『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『図解米国のソーシャルメディア・ビジネスのしくみ』(あさ出版)など30冊。
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